エビデンス EVIDENCE

会議室にも植物が必要な理由    ーミラーニューロンと植物の関係ー

2025.11.18

会議に求められること

会議では、提案(プレゼン)、意見集約、決定といったプロセスがあります。
建設的な意見が生まれる会議は気持ちのよいものですが、沈黙が続く、意見の堂々巡り、本題から逸れてだらだらと時間がかかる会議を好む人はいません。
発表者にはリラックスと明快な説明が、聞き手には共感的な理解や、提案を聞き意見を述べる集中力と適切な発言が求められます。


ミラーニューロン

ところで、人の脳の中にはミラーニューロン*と呼ばれる領域があります。
自分が行動する時だけでなく、他者の表情、動作、感覚反応を見る、聞くなどした時にも、同様の気持ちが引き起こされるのです。
他者の行動や感情を、自分の脳内で「鏡のように映し出す」ことから名づけられました。
スポーツ観戦で自分も体に力が入ったりドキドキしたりする、ドラマを見て涙が出る、といったこともミラーニューロンの働きです。
会議の時も、発表者、参加者相互の表情、言動、意欲などが、発表者、参加者の視覚、聴覚からミラーニューロンへと伝わります。

*ミラーニューロン:他者の運動観察時に,自己が運動していなくても自己の運動時と同様に賦活する脳領域がサルの運動前野で見つかった(Rizzolatti ら,1996).その後,ヒトの運動前野,一次運動野,頭頂葉下部にも同様のことが見られ,これらの領域はミラーニューロンシステム(MNS)と呼ばれて,他者の行動理解に貢献していると考えられている。
MNSによる他者の行動理解能力は,行動の意図を理解し,他者に共感する能力へ発展していくと考えられる(Gallese,2003).さらにBlakemore ら(2005)は一次感覚野も感覚に関するMNS を示すことを報告している.一方,自閉症スペクトラム障害がある人ではミラーニューロンがうまく働かないこともわかっている(Satoら, 2012)。


会議にも植物が必要な理由

この理由の1つ目は、「植物を見ることで、会議参加者の多数がポジティブな気分になれる」ことです。この考えのもとには‘バイオフィリア’(Kellert and Wilson, 1993)
と‘ミラーニューロン’があります。会議室に入った時、机上の植物に目が留まり、「植物があるといいな」「きれいだ」「かわいらしい」など、誰にもポジティブな感情が自然に生まれる場を作ることで参加者の緊張がほぐれ、「また会議か」「早く終わらないかな」といったネガティブな感情も軽減されます。実際に誰かが「植物があるとホッとするね」のような気持ちを声に出して、「そうね」といった共感的反応が生まれると、それを聞いている人に気持ちが伝わります。つまり、植物の影響で、会議に参加する一人一人が他者の言動、表情を通して和やかな気持ちで会議に臨めるのです。

2つ目は、「植物は緊張をほぐし、認知機能が働きやすい状態を作る」ことです。この考えのもとには「注意回復理論」(Kaplan&Kaplan, 1989)があります。会議中、発表者の緊張が緩和すれば、聞き手は表情筋の動きや身振り手振りといったノンバーバルな情報から感情や意図を読み取りやすくなります。聞き手が積極的に共感的な反応(うなずき、微笑みなど)を返すことで、会議室に安心感や信頼感が広がります。

3つ目は、説明をする・聞く、質問する、意見を述べるなどのプロセスでは自らの意思、すなわち自発的な注意が必要になります。これが長く続くと脳は疲労しますが「疲労時に植物を見ると回復に効果的である」ということです。この考えのもとにあるのも「注意回復理論」(Kaplan&Kaplan, 1989)です。会議中、頭が疲れた(集中力が切れてきた)と感じたら、植物を見て疲労回復をはかり、集中力を回復させるのです。


植物にとっての会議室環境

会議室に飾られたビオラとアップルミント

会議室に植物を置くときに注意すべきこともあります。会議のない時、照明、空調(冷暖房)が消されて、比較的光強度が低い環境でも育つ観葉植物であっても暗く、植物の生育適温である15℃~25℃より高い、あるいは低いために生育不良も起きやすいのです。そのため、会議室は、常時植物を置くのには適しません。会議のある時だけ植物を置く、あるいは会議室に置く植物を毎日変えて、会議室に置かないときには生育に適した光、温度が確保できる場所で管理します。
みどりスタックで管理している植物では、飾りたい植物を抜いて鉢カバーに入れて会議室に飾る、花や葉を切って水を入れたコップに挿すことも可能です。


キャスター付きのプランターを用い、会議室の利用状況に応じて移動(前)

キャスター付きのプランターを用い、会議室の利用状況に応じて移動(後)


会議室に向く植物例

小型で机上に置いても邪魔にならず、緊張感を和らげて、気分を明るくし、かつ、眠気をもよおさない明るい色の(明度や彩度が高い)植物が向きます。こうした植物を会議に出席する人の視界に入りやすい場所、例えば大きな机なら中央付近にいくつか置く、あるいはプレゼンター用の机に置くなどすると効果的です。


葉や花が明るい色:明るい色は覚醒やリフレッシュをもたらし、暖色系(桃・黄・橙)は適度な高揚感(ポジティブな気分)を与える。

ポトス ‘ライム’

ミント系ハーブ

マリーゴールド(黄・橙)

キンギョソウ(桃・黄・白など)

ビオラ(桃・黄・橙など)


葉が丸い:葉の曲線が緊張を和らげる。

ピレア・ペペロミオイデス

ペペロミア ‘ホープ’

ペペロミア・デピーナ


草姿に丸みがある:こんもりした姿が緊張を和らげる。

ネフロレピス ‘スコッチモス’

ペペロミア ‘サンデルシー’


繊細な優しさ

アジアンタム ‘フリッツルーシー’

 注:植物名の基本表示は、属名・種名 ‘品種名’ だが、慣用的に種名、品種名を
省略して流通している場合はその通り表示した。


引用文献

Blakemore S J, Bristow D, Bird G, Frith C and Ward J. (2005). Somatosensory activations during the observation of touch and a case of vision–touch synaesthesia. Brain. 128(7): 1571-1583.
Gallese V. (2003). The manifold nature of interpersonal relations: the quest for a common mechanism. Philosophical Transactions of the Royal Society of London B: Biological Sciences. 358(1431): 517-528.
Kaplan, R., & Kaplan, S. (1989). The experience of nature: A psychological perspective. Cambridge university press.
Kellert S R and Wilson E O(Eds.) (1993). The biophilia hypothesis. Island Press. 1993.
Rizzolatti G, Fadiga L, Gallese V and Fogassi L. (1996). Premotor cortex and the recognition of motor actions. Cognitive brain research. 3(2):131-141.
Sato, W., Toichi, M., Uono, S., & Kochiyama, T. (2012). Impaired social brain network for processing dynamic facial expressions in autism spectrum disorders. BMC neuroscience, 13(1),99.


profile研究者のご紹介

バイオフィリア緑化研究所副所長豊田正博

このエビデンス記事の監修は、兵庫県立大学客員教授豊田正博氏によるものです。
http://researchmap.jp/4187

(主な研究の一例)
・園芸療法を活用した認知症予防
・園芸活動中の前頭前野の脳血流変動をNIRS(近赤外線分光法)を用いて解析
・認知症予防園芸療法プログラム開発
・2010~2013年 科学研究費基盤研究C「園芸療法生理的評価法の開発-臨床現場における患者・支援者のストレス軽減を探る-」
・2015~2020年 科学研究費基盤研究C「脳血流とTDASからみた園芸療法の認知症予防効果

バイオフィリア緑化研究所副所長
豊田正博


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