エビデンス EVIDENCE

ネイチャーブレイクとマイクロブレイク

2026.02.12

ネイチャーブレイク

ネイチャーブレイクとは、都市生活者が日常生活中に自然に触れて行う休息です。
Hunterら(2019)は、都市居住者に8週間、週3回以上10分以上の自然体験をしてもらい、その前後でストレスホルモン(唾液中のコルチゾール)が低下することを報告しています。その内容はHarvard Health Publishing(2019)で紹介されました。
気に入った植物をオフィスの机上や自身の身近な場所に置き、疲労を感じた時に数分間、その植物を見ることで、注意をストレスフルな事象からそらして精神的疲労を回復させる休息方法もネイチャーブレイクです。私の研究(2020)『3分間ネイチャーブレイクがストレスを下げる』もCNN Health(2020)で紹介されました。
脳の疲労を回復して仕事に戻ることは、生産性向上だけでなく、慢性的ストレスを緩和して、高血圧、高血糖、うつなどを予防し、離職率低下などにつながると考えられます。




ネイチャーブレイクの理論的根拠

ネイチャーブレイクでは、一定時間、人が自然や近くの植物を見ることで効果が生まれます。人が飽きずに植物を見る根拠として、①世界的に支持されているバイオフィリア仮説『人は、生まれつき、自然、動物、植物との結びつきを好む』を紹介しました。さらに植物を眺めることが習慣となるためには、自分が選んだ(気に入った)植物を置くこと、自分で世話をする(水をやり、葉が伸びて成長する過程が植物に対する愛着を生む)ことが大切です。
 『オフィスの緑がストレスを下げる理由(その2)』でお話ししたように、植物を見ている時には、植物からの快刺激に人の注意がひきつけられる時間と同時に、仕事に関する思考から離れる時間が生まれて、仕事で使う脳の自己制御機能や実行機能が休まるために脳の疲労が回復します。



マイクロブレイクの効用

さて、ここからは最近話題になっているマイクロブレイクについてお話ししましょう。
マイクロブレイクは、昼休みや有給休暇などの予定された休みとは別に取る、非常に短い休息です。
通常、数十秒から数分程度で、軽い運動・ストレッチ、深呼吸をする、水を飲む、同僚と交流(雑談)をするなどが含まれ、心身の疲れを回復し、生産性向上につなげるものです。
特にデスクワークやリモートワークを行う人にとって、長時間同じ姿勢を続けることによる健康リスクを軽減するために重要ですが、行う内容によって効果も異なります。


軽い運動かストレッチ、深呼吸 

同僚と話す

想定される効用

全てに共通

  • 仕事から離れる時間が生まれ、気分転換、集中力回復になる。

  • ポジティブ感情の高まり。

軽い運動

  • 体幹ひねりや軽いスクワットでは即時的な脳や身体の血流増加。

  • 脳の覚醒レベル上昇

ストレッチ

  • 局所的血流改善(血流増加は小さい)、肩こり改善、体温上昇

  • 姿勢改善

  • リラックス、心理的ストレス軽減

参考情報:
太田裕造. (2008). 日常生活の中のストレッチ運動とその効用 (Doctoral dissertation, International Pacific University).
永松俊哉, 北畠義典, & 泉水宏臣. (2012). 低強度・短時間のストレッチ運動が深部体温, ストレス反応, および気分に及ぼす影響. 体力研究, 110, 1-7.

深呼吸

  • 交感神経活動抑制

  • 副交感神経活動促進

参考情報:
Noble, D. J., & Hochman, S. (2019). Hypothesis: pulmonary afferent activity patterns during slow, deep breathing contribute to the neural induction of physiological relaxation. Frontiers in physiology, 10, 1176.

水を飲む

  • 体液バランス回復、脱水予防

  • 口渇による不快感回復

  • 口腔刺激による覚醒

交流

  • 感情の共有

  • 社会的サポートの実感

  • 帰属感の醸成

  • 不安感や孤独感軽減

  • 社会的緩衝効果(人と話すことで交感神経過剰反応を抑制)

  • チーム内の信頼構築やコミュニケーションの円滑化

このように、マイクロブレイクには多様な効用が期待でき、かつ、経費がかからないことも特徴です。職場でマイクロブレイクを誰もがいつでも行える雰囲気があれば効果的な休息法といえます。


マイクロブレイクとネイチャーブレイクの違い

マイクロブレイクでは、マイクロブレイクをしようと頭の切り替えを行い、実際にマイ
クロブレイクを行った場合にその効果が得られます。あまり仕事に没頭していると、マイクロブレイクを忘れてしまうかもしれません。
ネイチャーブレイクでは、常に緑が机上にあれば、ブレイク中に限らず、常時、植物からの視覚刺激で緊張緩和効果が期待されます。
つまり、机に向かう時間は、植物からの効果的な刺激を受け続けている点がマイクロブレイクとの大きな違いです。


両者の共通利点・異なる利点

では、ネイチャーブレイクとマイクロブレイク、どちらがよいのでしょうか。
仕事時間中に、仕事から離れる時間を作ることが、長い目で見た時に仕事の生産性を向上させ、同時に職員の健康にもよい点は共通しています。
マイクロブレイクに含まれる軽い運動やストレッチ、水を飲むことなどは、ネイチャーブレイクにはない、マイクロブレイクの利点であり、ネイチャーブレイクを行う人にもお勧めできます。植物にかける経費を余計なコストととらえると、植物を使わなくてもできるほうがよいという考えもあるでしょう。
一方、ネイチャーブレイクでは、視界内に植物があれば、常時緊張緩和となる可能性があります。ストレスフルな時にも着座のままストレス回復をはかりやすいというメリットもあります。

経営的視点からは、オフィスにみどりがあると、職員だけでなく、顧客、採用対象者など、リクルート(人材募集)成果向上など、第3者にも好印象を与えやすく、効果が社員にとどまらないといえます。
職員にみどりを提供すること、みどりの生育に必要な植物育成用LED照明付棚を設置することは、今働いている職員や未来の社員への投資と考えることができます。
「社員は植物を育てないが、オフィスの壁面や窓辺に植物がいつも見える環境を作る」ことも、対外的にも社員向けにも意義があります。
長期的に見て、みどりはコストか、投資か、ストレス回復や生産性向上はもちろん、それ以外のアウトプット(成果)にも目を向けて考えてみましょう。


ネイチャーブレイクができるオフィス(イメージ)


(引用文献)
Hunter, M. R., Gillespie, B. W., & Chen, S. Y. P. (2019). Urban nature experiences reduce stress in the context of daily life based on salivary biomarkers. Frontiers in psychology, 10, 413490.

Harvard Health Publishing. A 20-minute nature break relieves stress.

Toyoda, M., Yokota, Y., Barnes, M., & Kaneko, M. (2020). Potential of a small indoor plant on the desk for reducing office workers’ stress. HortTechnology, 30(1), 55-63.

CNN health Keeping a plant on your desk can reduce workplace stress, study says.


profile研究者のご紹介

バイオフィリア緑化研究所副所長豊田正博

このエビデンス記事の監修は、兵庫県立大学客員教授豊田正博氏によるものです。
http://researchmap.jp/4187

(主な研究の一例)
・園芸療法を活用した認知症予防
・園芸活動中の前頭前野の脳血流変動をNIRS(近赤外線分光法)を用いて解析
・認知症予防園芸療法プログラム開発
・2010~2013年 科学研究費基盤研究C「園芸療法生理的評価法の開発-臨床現場における患者・支援者のストレス軽減を探る-」
・2015~2020年 科学研究費基盤研究C「脳血流とTDASからみた園芸療法の認知症予防効果

バイオフィリア緑化研究所副所長
豊田正博


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