エビデンス EVIDENCE

栽培が人を癒す

2025.04.28

園芸作業の特徴

園芸をしたことが無い人も、日常生活でつまむ、混ぜる、注ぐ、切るなどの園芸作業に似た動作をしています。これらは手続き記憶と呼ばれます。
手続き記憶とは、体で覚える記憶、技の記憶とも呼ばれ自転車に乗る方法や楽器を弾く方法など、反復によって身についた記憶です。

園芸作業では、同じ動作の繰り返しが多く、やり方を覚えるまでは、記憶や思考を司る、脳の前頭前野が働きます。
その後、やり方を覚えると前頭前野の働きは少なくなり、運動前野や補足運動野が働き、自動運転の様な状態になります。
そして自分の体が意のままに動く心地よさが、ストレス軽減につながります。


繰り返し作業時の脳のはたらき


デイサービス利用者による花壇苗の定植


園芸作業には、ストレスの軽減や認知症リスクを低下させる効果があります。
また、播種・収穫・潅水などの作業は、軽度から中等度の身体活動(普通に歩くより強度が低い身体活動)であるため、多くの人が無理なく続けられます。
障害のある方や高齢の方も作業が可能で、心身の健康維持に有益な活動です。

上記に関わる実証的エビデンスをいくつかご紹介します。


  • ガーデニングはストレスを下げる/ガーデニングをしている人は認知症リスクが低い(Soga M、Gaston KJ、Yamaura Y: ガーデニングは健康に有益: メタ分析。予防医学レポート。5: 92-99.2017.)

  • 65歳以上は,強度を問わず身体活動を毎日40分(10METs・時/週)行うと生活習慣病予防になる(厚生労働省. (2013). 運動基準・運動指針の改定に関する検討会報告書 2013 年.) 

  • ガーデニングには,継続的に行うことができる低強度から中強度の作業(播種,収穫,潅水など)がある。⇒要介護の高齢者も行える
    (菊川裕幸・豊田正博・守山真弘・小川敬之: 支援が必要な高齢者に園芸作業が与える身体活動負荷. 人間・植物関係学会雑誌. 18(2): 27-36.2019.)


profile研究者のご紹介

バイオフィリア緑化研究所副所長豊田正博

このエビデンス記事の監修は、兵庫県立大学客員教授豊田正博氏によるものです。
http://researchmap.jp/4187

(主な研究の一例)
・園芸療法を活用した認知症予防
・園芸活動中の前頭前野の脳血流変動をNIRS(近赤外線分光法)を用いて解析
・認知症予防園芸療法プログラム開発
・2010~2013年 科学研究費基盤研究C「園芸療法生理的評価法の開発-臨床現場における患者・支援者のストレス軽減を探る-」
・2015~2020年 科学研究費基盤研究C「脳血流とTDASからみた園芸療法の認知症予防効果

バイオフィリア緑化研究所副所長
豊田正博

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